後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が平成20年(2008年)4月1日からスタートし約10年経過しましたが、始まった当時は国民に対する説明不足、複雑な制度内容などによって、さまざまな問題が生じ、浮き彫りになりました。
後期高齢者医療制度が平成20年4月1日より始まる事さえ知らない国民が多い中、施行日当日、平成20年(2008年)4月1日、突如、『
長寿医療制度』へと名称が変更されました。

名称が変更されただけで制度の内容に変更があったわけではありませんが、そもそも制度の内容自体を知らない国民が多いうえ・・・施行日当日に名称が変更されたため混乱を招いたのは当然といえば当然でした(
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なぜ施行日当日に急遽、名称変更となったのでしょうか?
もともと「後期高齢者」という呼び方が失礼だと世間、野党から批判されており、施行日当日の閣僚懇談会で当時の福田康夫元首相がそれらに配慮し、急遽、「長寿医療制度」へ名称変更を指示したと言われています。
ただ福田康夫元首相の提案、指示が施行日当日とあまりにも突然だったため、
公式文書などには引き続き「後期高齢者医療制度」も使用し、長寿医療制度はあくまでも通称だと厚生労働省は説明しています。。
平成20年4月1日、制度開始時までに後期高齢者医療制度の対象者(被保険者)となっていたにもかかわらず、多くの方に「
後期高齢者医療被保険者証」が送付されていないといった問題が生じたため、厚生労働省は4月10日付けで「長寿医療制度の創設に伴う被保険者証の提示について」という通知を出し、「旧保険証・運転免許証」があれば後期高齢者医療被保険者証と代替できるようにしました。
また平成20年4月15日からは「後期高齢者医療保険料」の特別徴収(年金からの天引き)が始まりましたが、保険料を徴収する全国多くの市区町村で、「保険料額を間違う」、「保険料を免除されている被保険者から徴収する」などのミスが相次ぎ、問題となりました(
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さらに後期高齢者医療保険料の徴収体制が整っていない市区町村では特別徴収(年金からの天引き)の実施を延期し、それまでは口座振替、窓口での対応となるなど、後期高齢者医療制度スタート時にはさまざまな混乱が生じました。
以上のように対応する市区町村でさえ、制度の内容を完全に把握していないことが露呈されました。制度が始まった当時は仕方なかったかもしれませんが、このような対応が国民の不安を煽ったことだけは間違いありません。
2008年現在、後期高齢者医療制度の財源構成は以下の通りとなっています(病院窓口での患者自己負担額を除く)。
しかし将来的に後期高齢者医療制度の被保険者が増加し、現役世代が減少するため、被保険者の保険料割合1割(現役並み所得者は3割)が増加する事が予想されています。
後期高齢者医療制度の財源構成 |
被保険者
の保険料 |
現役世代の支援金 |
公費 |
約1割
(現役並み所得者は3割) |
約4割 |
約5割 |
ちなみに公費(約5割)の財源全体に対する内訳は以下の通りとなっています。
・国(定率分):「4」
・都道府県:「1」
・市区町村:「1」

上記のように後期高齢者の方も1割の保険料を負担しますが、制度開始時にはこの点だけをみてマスコミや高齢者などが、「高齢者の負担が増加して大変だ」などと批判、大騒ぎしました。ただ本当にこの負担割合は不公平でしょうか?
確かに日本の高度成長期を支えた現在の高齢者の方を敬うことは必要ですが、現実問題、このままの医療制度を続けていけば間違いなく日本の医療制度、社会保険制度は崩壊してしまいます。
さらに現役世代が「後期高齢者支援金分」として4割を負担している事実を忘れてはいけません。
日本は1998年以降、サラリーマンの平均年収は年々下がっていっているという現実からみれば、これ以上、現役世代の負担を増やすことこそ不公平ではないでしょうか?
逆に言えば、高齢者の負担割合がいままで少なすぎたのではないか?といった意見も出ています。
現に医療費の負担が少ないため、本当は病院へ行く必要がないにもかかわらず日課のように病院に行き、飲まない薬を貰っている高齢者の問題も忘れてはいけません。
もしも高齢者の負担額が増えれば、そのような無駄な医療費も確実に減るのではないでしょうか。

後期高齢者制度が始まった平成20年4月、いままで被扶養者で保険料負担がなかった方が、新たに保険料を負担しなくてはならなくなったためか、マスコミはこの制度の表面部分しか取り上げず、高齢者にインタビューし、この制度がいかに高齢者に不公平な制度なのかと連日報道していました。
実際は後期高齢者の保険料は低所得者などに対し、かなり負担を少なくする軽減措置などを講じているために(低所得者は月に300~500円程度の負担)、逆に後期高齢者(75歳以上)
を優遇しすぎている制度ではないか?と思えるほどなのにです。
超高齢社会に突入し、年々、少子高齢化が進む日本において、医療費が国や都道府県、市区町村の財源を圧迫していくのは明確で、全ての世代が負担割合が増えるのは仕方ないことです。
このような明らかに本質を見極めず、世論の賛同を得ようとする偏ったマスコミの報道に踊らされる方が非常に多いように見受けられます。
マスコミの報道全てが間違っているとは言いませんが、マスコミの過剰に煽った報道に踊らされないようにすることも必要かもしれません。
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